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August 26, 2005

続、アンチ・パターン。

前回の記事:議論のアンチ・パターンを読んで、「それらが禁じ手だと言われちゃったら、もう議論なんてできないぢゃないか!」と、困り果ててしまった人は、これまでの議論の方法が間違っていた。ということでしょう。 今後の「議論のやり方」を考え直したほうが良いかもです。

さて今回、また新たに、10コのアンチ・パターンを追加したので紹介いたします。

11.捏造だ!
12.自己完結
13.常識論/良識論
14.自分を卑下した態度
15.尊大な態度
16.必要以上に相手を賞賛する
17.拡大解釈
18.主観論/客観論
19.ソースの提示要求
20.応援のメール


11.捏造だ!】

相手の主張が事実無根であるかのように言いふらすための言葉。 「ねつ造だ!今すぐ訂正しろ!!」と騒いでいる人物の言動にこそ注意を向けるべきです。
議論において語られた事実が本当に存在したかどうかは、もちろん大切です。 しかし、事実の証明にのみ注力すると、肝心の主張とそれを支える根拠の論理性から話が逸れて、議論があらぬ方向へと進んでしまいます。 スグに「捏造だ!」と叫ぶ者は、議論を混乱させることが目的なのかもしれません。

本来、捏造というモノは、事前の根回しや偽装工作など手間のかかる作業をあらかじめ行っておく必要があるワケで、そうした地道?な用意の上に成り立っているものなのです。 ま、当然、ねつ造なので所詮は砂上の楼閣にすぎませんが。
議題を絞った、その場限りの議論において、ねつ造なんてそう簡単にできるものではありません。 ですので、「ねつ造だ!」と指摘してくる相手にこそ、より一層の注意を払うべきなのです。


12.自己完結】

議論を進める中で、要点について自分の理解した内容を相手に確認せず、勝手に納得して議論を終わらせること。
相手が在っての議論です。 対話なき議論は議論ではなく、禅問答や独り言・ポエムの世界になってしまいます。 そういうコトは独りでやってくださいね、チラシの裏にでも書くといいよ?

自分に都合良く解釈して、相手の確認も了承も得ないまま勝手に話を進める行為は、我田引水ですね。 自分勝手に解釈して、理解したつもりになっている内容が本当に合っているか?間違っているか?の確認もせず、続けざまに主張を繰り返されても困ります。 そんな自己チュー人間は、相手から「この人は対話を放棄しているなあ。」と見なされてしまいます。

誤解のないように書いておくと、私は、禅問答や詩はキライではありません。(谷川俊太郎さんの詩は好きですし。) 要は、人と人との対話があってこそ成立する議論で、独り自己完結してちゃダメでしょ?ってコトです。


13.常識論/良識論】

「~が常識です。」とか、「それは非常識だ!」など、議論上で常識論を振りかざす人がいます。 議論とは少し違いますが、ブレーン・ストーミング(*1)においては常識に囚われない奇抜なアイデアによって既存の流れを大きく変えることが稀にあります。 議論する上でも、斬新な視点からの主張を否定せず、もっと歓迎すべきです。 ただし、公序良俗に反しない範囲でお願いしますよ。

良識論については、良識のある・なしを「自分に賛同する者は良識がある。反対者は良識なし。」と、自分の主張を判断基準にして断言している風潮が見られるので、良識論を持ち出す際は注意したほうが良いでしょう。 議論の良識として。(笑)

参考:大手小町でよく見る面白フレーズ(Partygirlさん)


14.自分を卑下した態度】

「僕は頭が悪いから~」や、「あたしはメンヘラーだから~」と、主張の根拠にならない個人的事情を持ち出して「自分の弱さ」を見せることによって、相手からの便宜を図ろうとする試み・たくらみ。 そんな言い訳をするくらいなら最初から議論に参加すべきでないし、何も主張しないでおいたほうが身のためです。 相手に媚びて、議論を手加減してもらおうなんて卑怯でしょう。


15.尊大な態度】

「こんな簡単なコトも分からないようではオレと議論する資格はないな。」と、相手を見下した発言をすることで議論を有利に展開しようという浅ましい態度。 議論はお互い対等な立場で行うものです。 前回の「4.愚弄・嘲笑」に類似。


16.必要以上に相手を賞賛する】

これも前回の「4.愚弄・嘲笑」に似ています。 あからさまに相手をバカにするのではなく、例えば、「あなたの主張しておられるご意見は非常に素晴らしい!最高に感動しました!!貴殿の思考形態が誠にうらやましい!!!」と、前後の(否定的な)文脈にふさわしくない賞賛を述べることによって相手を愚弄する行為です。
悪意に満ちた賞賛は、相手より自分のほうが常に優位な立場にある。という、おかしな信念から生じています。

対策:無視すること。 裸の王様と議論してもムダである。


17.拡大解釈】

ある主張Aを極端に解釈して表現し直すことで、主張Aの発言主の反論を誘う方法。 発言主の反論の対象が「主張A」なのか「拡大解釈した部分」なのかを不明確にしたまま、しばらく議論を進めさせ、最後にこう言う。

「あなたは、ご自分の主張Aを自分自身で否定していますね。それは矛盾してやしませんか?」と。

こうして主張を曖昧にさせて議論を混乱させるのが狙い。

対策:拡大解釈や曲解があれば、拡大・曲解された部分を指摘し訂正を求めること。


18.主観論/客観論】

主観論とは、非論理的で根拠のない感情論のみの主張を述べること。 ただ感想を(否定的に)伝えるだけ、というのもコレに該当します。
「それは良いなあ、と思った。」みたいな(肯定的な)ひと言感想も、議論の意見として適切ではありません。
主観は多くの場合、単なる好き嫌い論になってしまい、不毛な言い争いに発展しがちなので注意。

(追記 2008/07/25 2:30)
主観はすべてNG、と言いたいワケぢゃなくて、主観でも論拠があればOKでしょう。要は、議論の場において、どれだけ感情を抑えて理屈を述べることができるか?です。そもそも、自分の意見なのだから主観が含まれているハズ。
あと、ついでに言うと、客観は偉くて主観は偉くない、という優劣(価値観)に縛られることもなくて、自由な議論ができたら良いなーと思います。
(追記おわり)

客観論とは、「みんながそう思っている。」や「客観的に見て~云々。」と、実際に存在しているかどうか分からない「みんな」の意見を代表したつもりになって述べること。 議論では、他の誰でもない「自分の意見」を主張するよう心がけるべきです。 ただし、自分の主張を補うために、実在する他者の意見を提示するのは可です。

参考:
ブログ上の議論が不毛な結果に終わりがちな理由(他人の不幸は蜜の味さん)
『みんなが不快だ』は俺が不快だ!(むだづかいにっき♂さん)
「客観」と「主観」の戦闘力(不倒城さん)


19.ソースの提示要求】

ある主張に対して、反論者が「根拠の根拠(ソース)」を求めること。 議論において、「主張と根拠」はセットです。 根拠が論理的にしっかりしていれば、それが主張のチカラとなります。 根拠そのものに説得力があれば、根拠の由来を示すことは必須ではありません。
しかし、反論者は、敵対する主張をなんとかして崩そうと躍起になり、主張者に「根拠の由来」を要求します。

そしてもし、ソースの提示がなかったらこう言うのです。

「ソースがないのなら、その主張は無効だ。」と。

または、もし、ソースが提示されたら、こう言います。

「その情報源は、根拠としては弱いな。」と。

対策:ソースの提示要求には安易に従わないこと。 ただし、主張者が「必要だ」と考えたなら提示するのは構いません。

参考:根拠を示せ!と言われたら


20.応援のメール】

議論相手に対して自分の主張が通らなくなった際に、「私のWebサイトの支持者から応援メールが多数寄せられています。」と、自分の意見が多数派であるかのように見せかける行為。 こうした、第三者には確認できない根拠(のサポート)を示されても議論の参加者にとって全く意味がありません。 「で、だから何?」と言いたくなります。 議論の場において、声なき声を持ち出すことは滑稽なので止めたほうがいい。

なお、もし仮に、本当に激励メールが届いていたとして、安易に送信者の名前やメール内容を提示するのは私文書公開に該当し、著作権や個人情報保護法に抵触するおそれがあるため充分注意すべきです。

Web上の議論で何か言いたいことがあるのなら、メールなどせず、直接Web議論に参加して主張すればいい。

参考:励ましのメール(モヒカン族のキーワード一覧)


【アンチ・パターンの最後に】

最後に、この一文を引用してアンチ・パターンの列挙を終わらせたいと思います。

~ 議論のアンチパターンより引用 ~

『アンチパターンの指摘』

状況:
他の人に対してアンチパターンの指摘を行う。

相手のアンチ・パターンを執拗に指摘することもまた「アンチ・パターン」です。 議論においてアタックする対象は、相手の主張する根拠そのもの、または、主張と根拠とのつながりの部分です。 それ以外の、議題テーマと異なる瑣末な箇所にアタックする者は議論相手として相応しくない可能性があります。


【エポケー】

~ 不備日報さんより引用 ~

もしコメントの応酬が変な方向に行きそうだなと思ったら、議論する前にエポケーのテクニックを使って共通の認識を持てるまで話し合ってみたらどうかなと思うんです。

エポケーなる方法は、議論の通常パターンとして使えるかもしれない、と思いました。 ただし、相手の主張に関する質問と確認の応酬は、お互いに疲れてしまうハズなので、体力と精神力と時間に余裕がないと難しいかな?
議論テクニックとしてのエポケーは、議論パターンの「聞き上手」と「相手の尊重」に該当しますね。

参考:エポケーとは何ですか?(OKWeb)


【人は、もっぱら、人間しか相手にできない。】

これまで何度か議論について考えてきて、私が「何を最も避けたいか?」と言うと、それは、「議論の相手にされなくなる」ことです。 議論する相手と自分、少なくとも2人が揃ってできる対話なのに、アンチ・パターンを繰り返してばかりでは、「この人と議論しても無意味だ。」 「こいつは自己主張するだけでツマンナイな。」などと悪い印象を与え、終いには、「もぉー!ホント、うるさいからムシ、無視!!マジ、ウザイよ。」と思われたら最後でしょう。

まあでも、空気の読めないヤツは、自分の引き際さえも分からないので始末が悪いんですがねえ。 何か発言するたびにヒンシュクを買う、そんなコメンテーターにはなりたくないものです。

人が対等に会話できる相手は、人間しかいないのだから。


トラバ送信先:
コミュニケーションツールとしてエポケーはどうでしょう?(不備日報さん)

参考:
自分が言ってることを大雑把に、「敵」が言ってることを丁寧に読んでみよう。(他人の不幸は蜜の味さん)
インターネットを通じたコミュニケーションを考える(不備日報さん)
議論のアンチパターン(翔ソフトウェア (Sho's))
↑議論のパターンとアンチ・パターンの考察。

関連記事:
議論のアンチ・パターン
アンチ・パターンに返答してみる


(*1):ブレーン・ストーミング
ブレーン・ストーミングが議論であるか否か? 本文中では、「議論とは少し違う」と書きましたが、実は「どっちでもいい」と思ってます。
議論が良い方向へ進むのであれば、議論の形式や儀式にこだわる必要はないので。

参考:ブレーン・ストーミングとは?

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Comments

こんにちは。トラックバックを見て飛んできました。いろいろ取り上げていただいてすみません。

前回の「議論のアンチ・パターン」と一緒に読むと、総じて「エゴイズムむき出で対話不在」の状態を指している項目が多そうな気がします。こういうこと片っ端からやる人いますもんね。


あと、TAKOさんの所からこっちに来た人が落胆しないか心配なので、エポケーの実践的事例を参考文献として新しくリンクを置きました。

Posted by: 陳居士 | August 26, 2005 at 08:10 PM

陳居士さん

>こういうこと片っ端からやる人いますもんね。

相手を(悪意で)攻撃することしかできない、心根の腐った人は、心の貧しい、かわいそうな人なのかもしれません。

>エポケーの実践的事例を参考文献として新しくリンクを置きました。

2つとも拝読しました。 長文でしたね…。(疲) フォントサイズと行間は、[CTRL]+マウス・ホイールの上下回転で拡大して読みました。

第3分科会「異文化間カウンセリングの活用-判断留保(エポケー)の実践-」
http://www.bunka.go.jp/1kokugo/16_tokyo_6-3.html

この↑記事が面白かったです。

形式的には、Web上の議論であれば相手の発言をコピペして、語尾に「~でしょうか?」とか「~なのですね。」と質問と確認を行えばいいのかな、と思いました。 あくまで、形式として、です。
要は、相手に「あ、この人は私の話を謙虚な姿勢でちゃんと聴いてくれている。」と安心させることに成功したら、最初のハードルは突破できたと言えるのでしょう。

んー、エポケーの達人同士が両者ともにエポケーしたら、互いに受け身だから議論は進まないですよね。
凄腕の剣客2人が、対峙したまま半刻の間、全く動かない…みたいな。

あと、ちょっと思ったのは、「エポケー的な才能を持った男はモテるのかも?」と、非モテ系の僕としては勉強になりました。 いや、今さらモテたくはないですけど。

港区赤坂四畳半社長:理系の男はなぜモテないのか
http://blog.livedoor.jp/shi3z/archives/5363767.html

というワケで、話を脱線させつつ、でわでわ。

Posted by: TAKO | August 27, 2005 at 04:16 AM

>これまで何度か議論について考えてきて、
(中略)
>と思われたら最後でしょう。

それでもネット上では、主張し続ければ誰かしら相手しますね。
何かを非難する話は人目につきやすいですし。
似た考えの人が集まって、独りにならないでも居られるし。

Posted by: ピーちゃ♪ | August 27, 2005 at 11:15 PM

TAKOさん

ぜんぶ読んでもらえたのはすごくうれしいです。ありがとうございます。

普通あれを見たら、全部読んでやろうとは思わないだろうなあと思いながらリンクを貼ったんです。つまみ食い程度に読む人がいればラッキーかなという感じで。

>「エポケー的な才能を持った男はモテるのかも?」

多分あってると思います。瞬間的な威力はありませんが、じっくり話す機会があればエポケーの素養がある人が確実にモテますね。

Posted by: 陳居士 | August 30, 2005 at 12:10 AM

ピーちゃ♪さん

>似た考えの人が集まって、独りにならない

類は友を呼ぶ。ということで。

・・・

陳居士さん

>普通あれを見たら、全部読んでやろうとは思わないだろうなあ

Webで一気に読む文章としては長いほうでしょう。 あの記事を強引にひと言で要約すると、「エポケーとは、よかった探しである。」と言えるのかな。 ポリアンナ物語(少女パレアナ)の話が出てましたので。

「パレアナ」を呼ぼう(S嬢のPC日記さん)
http://blog.goo.ne.jp/satomies/e/0431103cdd5475ff422ee7cb30c3b311

>じっくり話す機会があればエポケーの素養がある人が確実にモテますね。

私の場合、女性とゆっくり会話するシチュエーションがほとんどないので、その時点で既にダメですね。 まあ、別にいいんですけどぉ。
でわでわ。

Posted by: TAKO | August 31, 2005 at 03:40 AM

過去記事にこうしてまた役割を与えてくれて、ありがとう。

Posted by: S嬢 | August 31, 2005 at 11:15 PM

S嬢さん

>過去記事にこうしてまた役割を与えてくれて

ソーシャルブックマーク (S嬢のPC日記さん)
http://blog.goo.ne.jp/satomies/e/aaf704c514933b335519e528eaf2197d

この↑記事もそうですね。

>ありがとう。

どういたしまして。 でわでわ。

Posted by: TAKO | September 01, 2005 at 04:39 PM

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